野村ダムにほど近い山間ののどかな地区に佇む、ほわいとファームのチーズ工房。この工房から出荷されるほぼ全てのチーズの生産を担うのは、チーズ職人の大森さんだ。
一つ一つ丁寧に手作りされたカマンベールチーズ。そこには、地元の生乳を使ったチーズ作りへの強いこだわりがあった。野村町で生まれ育った大森さんにとって、酪農は常に身近な存在だった。乳製品製造に興味を持ち入社し、約20年に渡り乳製品の製造に携わってきた経験を持つ。
工房開設時にチーズ製造用の機器を導入したものの、当初は主力商品であるヨーグルトやアイスクリームなどの製造に追われ、チーズの製造にまで手が回らない時期もあった。それでもチーズ作りに対する思いは止むことなく、ゴーダチーズやモッツァレラチーズの試作を重ねたが、採算がとれず一度は頓挫した。その後大手乳業企業との共同事業として、再びチーズ作りのチャンスが訪れる。北海道から招かれたチーズ職人の下で学び、技術力も向上。こうして本場の技術を活かし、地元の生乳を使用したカマンベールチーズ「森のろまん」は誕生した。
生乳と塩だけで作られるチーズは、生乳の味によってその食味が大きく左右される。その味わいの源は、西予市でとれる新鮮で良質な生乳だ。西予市には現在50件近くの酪農家があり、その数は愛媛県内全体の半数近くを占める。
標高1,400m、西予市最高峰を誇る四国カルストの広大な土地。戦後この地を開拓し、酪農が始まった。冬の厳しい気候条件や酸性の土壌により、農作に適さないこの土地では、酪農は生活の重要な糧となっていったのである。さらに、四国カルストだけでなく周辺の中山間地域でも酪農が盛んに行われてきた。周囲を四国山地に囲まれた野村町もまた、肱川の浸食でできた河岸段丘の地形のため平坦地が少なく、農作が困難な土地であった。野村町では、昭和初期に酪農の振興が図られ、元々盛んだった養蚕と兼業で酪農を行う農家も多かったという。
農作に適していない土地柄ゆえに、発展した酪農。厳しい環境でありながらも、冷涼な気候と豊かな自然によって育まれたジオの恵みが、現在のチーズ作りに繋がっているのだ。
生乳に含まれる乳脂肪分は、夏場で約3.5%、冬場では約4%と季節によって異なる。脂肪分が多いと水分を取り込みすぎチーズが固まりづらくなるので、あらかじめ乳脂肪分を取り除く。
乳牛の餌となる牧草や、季節による乳脂肪分の変化などで異なる性質の生乳から、いかに均質なチーズを作ることができるか、それが大きな課題だ。「同じ季節、同じ工房や方法で作ったとしても、全く同じものはできず、いまだに難しい」と大森さんは言う。
直径11cm、重さ250gというカマンベールチーズ元祖の地と称されるフランス・ノルマンディ地方伝統の大きさや製法にこだわる一方、味に関しては匂いやクセを少なくすることで、日本人の味覚に合ったチーズを追求している。
熱殺菌をしていないため製造後も徐々に発酵が進み、熟成して日々変わってゆく味わいを楽しむことができるのも魅力の一つ。愛媛県内だけでなく、地元食材にこだわる料理店からの注文や、大手航空会社の機内食として使用されるなど全国に向け広がりを見せている。
愛媛県西予市野村町野村16-383-1
TEL:0894-72-3351 FAX:0894-72-3382
MAIL:whitefarm@md.pikara.ne.jp URL:http://www.arigatou-s.com/enterprise/whitefarm/