城川町の地質 へ 目次へ トップページへ

3 主な化石の解説
画像をクリックすると大画面が出ます
城川のウミユリ類 Crinoids
 ウミユリはウニやヒトデと共に棘皮動物の仲間の一つで、カンブリア紀以降に知られ、現在も太平洋で多く生息しています。その名のように海底に生えた百合に似ています。体は茎と、その上の萼と腕から成る花の様な冠部で出来ています。ウミユリの多くの種類の茎は、枝状の根を持ち、海底の岩などに体を固定し、腕から生えた羽枝で海水中の細かい餌を捕らえて食べます。
 ウミユリの骨格は、死後短時間で分離してしまうため完全な形のままで化石となることは大変まれです。城川町の吉之沢石灰岩転石から発見したウミユリの化石はシルル紀のクサリサンゴと共に産出したことから約4億2000万年前の化石でしょう。また菊之谷のジュラ紀の地層(1億4000万年前)からは茎の断面が星型をしたペンタクリニテスというウミユリの化石が産出しています。ウミユリは時代による形の変化が少ないため種類の見分けは大変難しい化石といわれています。冠部の化石が少ないためでしょう。
フズリナ Fusulinid
 フズリナ…日本名"紡錘虫類"は原生動物の仲間で、石炭紀前期末に出現し、ペルム紀末(約2億5000万年前)に絶滅するまでの1億年間世界各地の熱帯から亜熱帯の浅海で大発展を遂げました。フズリナは石炭紀〜ペルム紀の代表的な示準化石となっています。
 外形はラグビーボールをより小さくしたような形をしています。殻はらせん状に巻いた石灰質で、内部は隔壁によって多くの部屋に仕切られています。現在約5科110属3000種の種類が分かっています。石炭紀前期末のフズリナは大変に小さく、虫めがねでやっと見付けられる位のものが多いのですが、ペルム紀になると長さが1cmを超えるものも現れました。
 日本でも、秋吉台、赤坂石灰岩、高知県の大平山、を初めとして各地の石灰岩地帯より産出しています。この近くでは町内の板取川、魚成、遊子川、野村町の大野ケ原などでも発見されています。中でも板取川のフズリナは石井先生によって石炭紀の化石であることが分かりました。
日石(ひいし)サンゴ ヘリオリテス Heliolites sp.
床板サンゴ 三瓶町須崎産

 日石サンゴは大小2種類の個体が集まって出来ています。横断面を見ると大きい個体を囲むようにして12個の小さい個体が取り巻いています。まるで太陽の輝きのように見えることからこの名が付きました。
 日石サンゴは古生代シルル紀〜デボン紀末にかけて、クサリサンゴやハチノスサンゴと共に南の暖かい海でサンゴ礁を形成していました。その後大陸の移動に伴って、現在の日本列島の部分に移動して来たのです。日本各地の黒瀬川構造帯から産出が知られています。図の化石は三瓶町須崎の黒瀬川構造帯の地層から、周木の川西ゆうさん(当時小学生)が採集したものです。大変保存の良い化石ですね。城川町でも窪野や嘉喜尾から見付かるかもしれませんよ。
城川のウニ Firmacidaris neumayri Nisiyama
 ウニは棘皮動物の仲間で、ジュラ紀後期(約1億5000万年前)の石灰岩より産出しました。ウニはオルドビス紀に出現しましたが、現在も世界中の浅海や深海に分布しています。ウニを便宜上大別すると、上から見て円形をした正型類のウニと、それより進化したハート型の不正型類ウニに分けることが出来ます。
 城川町で産出するウニの化石は主として正型類の仲間のフィルマキダリスと、バラノキダリスで、ジュラ紀の鳥巣石灰岩から産します。両種とも本体が見付かることは非常にまれで、ボーリングのピンを逆さにした様な形の棘が産出します。それも完全な形をとどめているものはまれで、ほとんどは折れています。城川町内での産出は魚成の古市や土居の唐岩、下相などの一部に限られています。お隣の高知県佐川町では棘の化石がたくさん見付かっています。
 このウニの生活環境は主に海底の砂や岩の上に生息していました。ここに載せた図は城川産のウニの棘のスケッチです。卵型や棒状、扁平になったものなどが見られます。
枝状のサンゴの仲間
 城川町唐岩の山頂には幅・高さともに数十メートルに及ぶ石灰岩の崖がそびえています。その岩の落石のなかに、細い枝状をした群体サンゴの風化面があるのが見付かりました。群体サンゴは長さ4〜5センチメートルの小枝状をしており、枝の部分にはそれぞれ六放サンゴの断面が見れます。枝状の縁で風化の進んだ部分ではサンゴは溶け去ってのこぎり状になっていました。このサンゴは図鑑や手もとの文献を見た範囲では、種類ははっきりしませんでした。まわりの母岩からはキダリスウニの棘の化石や層孔虫が産出しましたので、時代はほぼジュラ紀であることがわかりました
 このサンゴは六放サンゴですが、比較のために城川町菊之谷産の単体六放サンゴスケッチを載せておきます。
クサリサンゴ Schedohalysites kitakamiensis
 クサリサンゴは腔腸動物の仲間で床板サンゴ類に属しています。横断面を拡大した時、鎖をつないだような模様が見えることからこの名で呼ばれています。生息していたのは古生代オルドビス紀からシルル紀までで、その後地球から姿を消してしまいました。
 城川町では以前嘉喜尾や窪野の石灰岩から発見されましたが、現在では幻の化石となりました。文献によるとここから発見された化石はシェドハリシテス・キタカミエンシスと記録されています。高知県横倉山のシルル紀層からも同様の化石が産出しています。また横倉山からはファルシカテニポラ・シコクエンシスやハリシテス・シィスミルヒ、その他のクサリサンゴ類が見付かっています。城川の嘉喜尾や窪野は横倉山と同じシルル紀(約4億2000万年前)の地層だといえます。
 クサリサンゴはハチノスサンゴ、日石サンゴ、層孔虫などと共に南太平洋の暖かい海でサンゴ礁を造り、三葉虫などと助け合って生きていたことでしょう。
ハチノスサンゴ Favosites sp.
 腔腸動物床板サンゴ類に属しています。横断面の模様がハチの巣のように見えることから「ハチノスサンゴ」と呼ばれています。個体は六角形の柱状をした薄い囲壁によって互いに連結して直径が数センチから十数センチの群体を造っています。
 出現は古生代オルドビス紀で、シルル紀やデボン紀に繁栄しました。住んでいた環境は南の暖かい海で、クサリサンゴや日石サンゴ、層孔虫などと共にサンゴ礁を造っていました。その後大陸の移動と共にはるか5000kmを移動して、日本列島に押し付けられました。その後4億年の年月を経て、大地と共に上昇し黒瀬川構造帯になりました。
 このようにして形成された北上山地や横倉山のシルル紀の地層からはハチノスサンゴやクサリサンゴが沢山産出しています。以前は城川町の嘉喜尾や窪野から報告されたことがありますが、最近では聞かれません。
 クサリサンゴやハチノスサンゴはシルル紀やデボン紀の時代を知るための示準化石であると共に、当時の自然環境を知るための示相化石としても重要なものです。ちなみにこの化石が見付かれば当時の生活環境は南の暖かいサンゴ礁だったといえます。
ニセハチノスサンゴ Pseudofavosites sp.
ジュラ紀後期の造礁サンゴ

 このサンゴは横断面がシルル紀のハチノスサンゴに似ていることからニセハチノスサンゴという有難くない名前を付けられていますが、横断面の模様は夏の夜空に打ち上げられる花火を連想するような大変美しい模様をしています。
 高知県佐川町には各所に「鳥巣石灰岩」が分布していますので、日本はもとより世界各国の研究者が多く訪れています。それぞれの鉱山によって変わった化石が産出しています。本書の図版でも、研究の進んでいる佐川町産の鳥巣石灰岩の化石を参考のために掲載しました。
 城川町でもジュラ紀の鳥巣石灰岩からは層孔虫、腕足貝、キダリスウニ、その他珍しいサンゴの化石なども見付かっているので、ニセハチノスサンゴなど、図版に示した佐川町の化石と同じようなものを発見出来るかもしれません。

城川町の地質 へ 目次へ トップページへ